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1月21日 羽生 善治先生による「第111回 一燈塾」を開催いたしました

2019年1月22日

徳真会クオーツタワーにて棋士の羽生善治先生による第111回一燈塾が開催されました。前回おこしいただいた際は、棋士として、勝負についてお話いただきました。今回は「AI時代の未来」というテーマのもと、前回とは少し毛色の違ったお話をいただきました。

前半は、AIのルーツ、歴史のお話から始まり、ボードゲームにおけるAIの進歩についてお話しいただきました。二十数年前は、100万局面以上のデータベース、1秒に2億局面読むハードウェアが存在するも、一つ一つの局面を様々な基準から“評価する”ことが苦手だったそうです。その後、画像認識の技術が向上すると、“将棋を指す”という観点から、“正方形の空間における動きを捉える”という観点に転換し、大きな進歩を遂げたそうです。進歩の次元がダイナミックな点が、大変興味深かったです。

後半は、一般社会におけるAIの未来についてお話いただきました。日本においてAIは、農業や漁業の分野で伸びるのではないかとおっしゃっていました。これらは、感覚的に実行することはできても、言葉や数値に置き換えるのが難しいこと(暗黙知)を扱う分野です。そして、このようにAIは、AI単体として進歩するのではなく、他の産業とのコラボレーションによって進歩するのではないかという見解を示されました。そのコラボレーションの在り方を生み出すことに、人間の大きな可能性があるのではないかとおっしゃっていました。

講義の中で何より印象的だったのは、将棋の世界には「棋は対話なり」という言葉があり、対局中は相手と会話している感覚があるのに対し、AIとの対局にはそれがない、というお話でした。

AIなどの最新技術の進歩、研究動向に対する鋭い視点と、自らの専門分野における研ぎ澄まされた感覚が、羽生先生の、人々に感動をもたらす偉業を生み出したのだと思いました。